「関節痛」の原因は大きく分けて二通りあります。一つは変形性関節痛と呼ばれるもので、膝・股関節・手首・足首・肘などで起こります。
二つ目は、他の疾患により症状が現れる関節痛です。具体的には慢性関節リウマチや全身性エリテマトデスなどの膠原病、痛風、骨肉腫、可能性関節炎などです。
ここでは一つ目の「変形性関節炎」に絞って解説いたします。加齢により関節の軟骨がすり減り、関節炎や変形を生じて、痛みが起こります。
正常の膝関節では関節の表面は軟骨で覆われています。弾力性に富んだ組織からなる軟骨は、衝撃を和らげたり、関節の動きを滑らかにします。また、滑膜から分泌される関節液はヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、潤滑油の役割をします。
初期の変形性関節炎では、軽度の関節軟骨の摩耗が生じます。軟骨の摩耗が進むと、関節の曲げ伸ばしなどの刺激によって関節炎が生じます。また、関節液が多量に分泌されて関節に「水」がたまることもあります(関節水腫=かんせつすいしゅ)。しかし、逆に関節内のヒアルロン酸は減少します。
軟骨の摩耗がさらに進むと、関節の土台の骨が露出したり骨棘(こつきょく)といった骨そのものの変形が生じることもあります。こうなると、関節を動かすこと自体が非常に強い痛みを伴うため、曲げ伸ばしに制限がかかり、日常生活において大きな障害になります。
カウンセリングと漢方処方
漢方では、変形性関節炎で見られる症状を「水毒(すいどく)」とみなし、これを是正する処方を主体にします。このことにより、体のバランスが是正され、痛みが緩和されます。
ただ、ひどく軟骨が摩耗している場合は、漢方薬だけでは痛みが取れないこともあります。漢方薬で物理的な症状を(軟骨の摩耗)を元に戻すことはできません。
鹿鳴堂では、軟骨の成分であるグルコサミン摂取の併用をおすすめします。日本やアメリカの臨床試験で変形性関節炎に対するグルコサミンの効果が証明されております。グルコサミンには軟骨細胞を刺激して、軟骨の形成を促進することや、炎症の痛みを和らげる働きがあることが確認されています。
あまりにも痛みが激しい場合は、「非ステロイド抗炎症薬」の内服や外用薬を併用します。 どうしても、「非ステロイド抗炎症薬」などの西洋薬を使いたくないという方には、抗炎症作用があるとされるデビルズクローやキャッツクローのような薬用植物や緑イ貝抽出脂質(ジーメル)を用います。
また、慢性関節リウマチのように、関節部分に新生血管が生じている場合は、鮫抽出脂質(マコリピン)が有効です。
「他の病気による関節痛」の場合は、その原因となる疾患に対応することが先決になります。
逆に「頻繁に起こる関節痛」が大きな疾患のシグナルであることも少なくありません。あまり続くようでしたら、躊躇なく病院を受診してください。
【処方例】
ハチミジオウガン、トウカクジョウキトウ、ボウフウツウショウサン、エッピカジュツブトウ、ゴシャクサン、ボウイオウギトウ
体質改善・快方のプロセス
軟骨の摩耗がそれほど進んでいない場合は、漢方薬だけで症状が安定することも多いです。体のバランスを整えるのに、約4ヶ月かかるとお考えください。もちろん、その前に、症状の改善は見られます。
グルコサミンを併用されると、症状が取れるまでの期間が短縮されます。アメリカの臨床試験のデータからも、2週間から2カ月で症状が緩和されることが多いです。
「関節痛」が取れてからも、予防および体質改善のために漢方薬またはグルコサミンを継続服用されることをお勧めいたします。人間は二本足で立っておりますので、特に膝には負担がかかりやすいです。摩耗する膝軟骨をグルコサミンで補いましょう。
ただし、「病気が原因である関節痛」の場合は、原因疾患により対処法が異なります。
養生法
「生活習慣を改善」することに尽きます。
- 和式から洋式の生活に変える
正座や、床からの立ち上がる動作など、和式の生活はとかく関節への負担が大きくなります。可能でしたら、ベッド・椅子・洋式トイレなど生活に取り入れてみましょう。 - 肥満のある人は減量する
肥満は関節への負担が物理的にかかってきます。肥満のある人は、食生活や運動習慣を見直して減量しましょう。 - 重いものをなるべく持たない
重いものを持つと、その重さのぶんだけ体重が増えるのと同じことになります。荷物はなるべく軽くしましょう。 - お風呂の温度は症状によって使い分ける
炎症が激しく出ている場合、熱いお風呂はさらに炎症を悪化させるので厳禁です。逆に血行不良が自覚されるときは、積極的にお風呂に入り、幹部をマッサージしましょう。その見極めは、入浴時、幹部が心地よかったら積極的に入るようにしましょう。逆に痛みが増すようなら、しばらくお風呂に入るのは見合わせましょう。