悪徳業者の見分け方

悪徳業者の見分け方

これから健康食品を購入しようと検討されている方、悪徳業者のしつこい営業でお困りの方は、ぜひご参考にしてください。

高額商品を購入させられたAさんの例

ある日、当店に、奈良県天理市在住のAさん(72歳・女性)がご来店されました。
『健康のためなら死んでもいい』というくらい、健康志向の強い方でした。

具体的にどこが悪いということではなく、とにかく今より健康になりたいとのこと。漢方には『未病を治す(予防医学)』という考え方があるので、私も真剣にAさんに合った処方を選ぶつもりでした。しかし問診していくうちに、すごいことが分かってきました。

私:「Aさん、今、なにか医薬品や健康食品は飲まれてますか?」
Aさん:「はい。移動式の○○健康食品さんで」
私:「種類は?」
Aさん:「うーん、10種類くらいありますよ」
私:「えーっ!次回、その10種類全部持ってきてください!」

悪徳商法の手口

後日Aさんに詳しくお話を聞いてみますと、次のようなことがあったそうです。

新聞広告に「洗剤1円!来場者にはしょうゆが無料!」という言葉が書いてあって、その他にも、1円や5円の激安な商品が載っている広告があり、最後に「自然食品」の宣伝がありました。

それにつられて店に行くと、店中にはいすが並べられていて、マイクで「これが○○円!欲しい方!?」なんて従業員があおり立てて、皆さんこぞって「ハイ、ハイ」と、競うように手を上げます。(「もらわなくては損!」という一種の催眠状態を作り出しているんですね。)

そして、会場の雰囲気が盛り上がり、消費者が冷静な判断力を失ったところで、目的の商品の紹介を始めます。「通常の○○%オフ」、「先着○名様」などと言って購買意欲をさらにあおり、契約を取り付けます。商品は健康食品だけにとどまらず、健康器具、布団などさまざまです。

また同時に、その業者の社員が出口付近を固めて、帰りづらくするという手段もとられ、結局は必要のない商品を買うことになってしまいます。

そのお話を聞いたあと、総額数十万円にものぼる健康食品を、Aさんにすべて見せて頂き、「飲んでもよいもの」「飲まなくてよいもの」「飲まない方がよいもの」に分類してさし上げました。


すると、その健康食品のほとんどが、安価で購入できるごくごく一般的なものでした。それだけならいざ知らず、Aさんにとって、健康を害することになりかねない商品まであったのです。

このような業者に社会道徳はないのでしょうか?自分達だけが儲かればそれでよいのでしょうか?

無意味に健康への不安を強調して、強引に商品を買わせようとするやり方に、私は薬剤師として強い憤りを感じます。

悪徳商法かどうかを見分ける方法

本題の「悪徳業者を見分ける方法」について解説いたします。
ポイントは5つあります。

  • ポイント1 実店舗を持たない仮設店舗
  • ポイント2 まとめ買いをしつこく勧めてくる
  • ポイント3 科学的根拠のない説明をする
  • ポイント4 聞いたことのないNPO団体が推奨している
  • ポイント5 医学博士が書いた本「バイブル本」を元に勧める

ポイント1 実店舗を持たない仮設店舗

実店舗がないので、商品の購入後にどこに問い合わせをしたらいいか不明です。
しかし、高額の健康食品を大量に購入した後、疑問や相談があってもどこに連絡したらいいかもわからない、なんておかし過ぎます。これは「売ってしまったらもうおしまい」、ということを物語っています。

いつでも連絡が取れるお店で購入するのが絶対条件です。

ポイント2 まとめ買いをしつこく勧めてくる

これもポイント1と同じで、「とにかく一度に大量に売って、その後のことは知らない」という考えでしょう。最初にとんでもない定価を勝手につけて、

「1年分まとめ買いをしてくれたら50%引きにします」

などと迫ってきます。常識的に考えて、最初の価格設定が高すぎるのでしょう。けっしてお得ではないのです。

ポイント3 科学的根拠のない説明をする

「このカプセルを飲んだら宇宙のエネルギーが体内に充満して、どんな難病も治ります」

少し、極端な例を出しましたが、悪徳業者はまったく科学的根拠のないことを、さも平然と説明するものです。
この対策は簡単。もし、あなたが少しでも疑問を感じたら、

「今の話の根拠となる文献を下さい」

と言ってみてください。もしその場が、とてもそんな強いことは言えないような雰囲気でしたら、

「親戚に医師(または薬剤師)がいるので今の話について聞いてみます」とおっしゃってみてください。悪徳業者は顔を引きつらせて、商品の押し売りを諦めることでしょう。

ポイント4 聞いたことのないNPO団体が推奨している

NPOとは、”Non-Profit Organization”、日本語に訳すと「非営利組織」や「非営利団体」の意味です。「ボランティア団体」と呼ばれることもあります。

NPO法人とは、「政府により法人格を認められた民間の非営利団体」ですが、実は、営利事業もできます。そのことを利用して、当初から商品販売のために、NPO法人格を取得して運営するという場合があります。

きちんとNPO法人設立しているならまだしも、そうでなく名ばかりという場合も存在します。聞いたことのないNPO団体でしたら、購入する前に、NPO法人データベース(http://www.npo-hiroba.or.jp/)で調べることをお勧めいたします。

ポイント5 医学博士が書いた本「バイブル本」を元に勧める

バイブル本とは、特定の健康食品の効果を解説した本のことです。間接的にその健康食品の効果を広告・宣伝するものです。

社会的な権威である医学博士が書いたり、推奨した本が多いのが特徴です。どこそこの大学の、こういう研究所の偉い先生や博士が、効果があったと言っているとか、誰それが飲んだら治ったとか、良くなったとかいう体験談がたくさん載っています。

しかし、この「博士」というのもくせ者なんです。医学博士ではないことが多いですし(生物学博士など)、たとえ医学博士であっても、医師ではない場合があります。

一方で、もちろん国民の健康を真から願って、医師等が執筆された本もあります。ではそれを、どうやって見分ければいいのでしょうか?

下記にバイブル本の特徴を記載しましたので、ご参考にしてください。

■バイブル本の特徴■
独立行政法人・国立健康・栄養研究所が、健康食品の誇大広告になりそうな例を挙げて注意をしております。
「即効性」「万能」「最高のダイエット食」
過度の期待を抱かせる表現がある。
「天然」「食品だから安全」「全く副作用がない」
化学合成でないといっても、すべてが安全とは限りません。
「新しい科学的進歩」「奇跡的な治療法」「他にはない」「秘密の成分」「伝統医療」
十分に研究されていない未承認医薬品成分を含有している場合に、このような表現が多くなります。副作用が出る事例も報告されている。
「驚くべき体験談、医師などの専門家によるお墨付き」とする。
一部の人間の体験だけでは、臨床的にきちんとした客観的データであるとは認められません。他の原因による治療効果の可能性を無視しているケースも見られるので、効果があるとは断言できない。
「厚生労働省許可」「厚生労働省承認済み」を謳う。
特定保健用食品以外では、厚生労働省は健康食品の認可作業は行いません。
また、輸入健康食品では過去の健康被害事例の教訓から成分表の提出を求める事もあるが、この成分表提出と輸入販売許可だけで、「許可」や「承認済み」とするケースがあるので注意が必要です。(この場合は単に、輸入販売の許可に過ぎません)
「○○に効くと言われています」
「言われています」と伝聞調とする事で、根拠の不明確さを補おうとしています。世間の噂・評判・伝承・口コミ・仮説等をもとにしているので、効果には疑問が残ります。
特許番号を記載する。
特許は効果を証明するものではありません。単に、オリジナル性を主張するだけのものです。
実施していない動物実験や、条件設定が不適切な動物実験で効果を謳う。
架空の事実をでっち上げるケースも報じられています。