眼科疾患

超高齢化社会を迎え、白内障を患われる方が増加の一途をたどっています。また、コンピューター等のOA機器の普及によって目を酷使し、ドライアイや眼精疲労を訴える人も増えているようです。

そして、受験やテレビゲーム等による夜更かしで生活習慣を乱し、その上、不規則な食生活によって胃腸に負担をかけて、仮性近視を引き起こす原因にもなっております。

目の疾患は数多くあります。それをひとつひとつ解説するには膨大過ぎるため、主な疾患に絞って解説いたします。

眼精疲労

目が疲れてくると、充血してショボショボしたり、涙が出たり、軽く痛んだりします。それに伴って、頭痛や首・肩の凝り、疲労感や倦怠感が現れることもあります。こうした目の疲れと、それに伴う諸症状を眼精疲労と呼んでいます。

西洋医学ではビタミンB12の点眼などで対応しますが、満足の得られる効果が出ないケースが多いです。漢方薬で著効を表すことも多く、得意分野になります。

白内障

眼球の中の「水晶体」が、何らかの原因で濁ってくる病気です。水晶体はカメラのレンズに相当する組織で、本来は無色透明です。ところが白内障になると、それが濁ってきます。水晶体が濁る原因は色々(糖尿病、外傷性等)ありますが、最も多いのが「加齢」です。水晶体の主成分であるタンパク質が、加齢による酸化によって変性するためでないかと言われております。

日本では、60歳代では約7割の人に、70歳代以上では8割の人に、80歳以上になるとほぼ全員に加齢性の白内障がみられます。

西洋医学では、濁った水晶体を手術によって取り除き、「眼内レンズ」を挿入する、「手術療法」が第一選択になります。今のところ薬で水晶体の濁りをとって元の透明な状態に戻すことは不可能です。

緑内障

何らかの原因で視神経が障害されて視野がかけていく病気で、放置すると失明するおそれがあります。日本では40歳以上の人の約20人に1人は緑内障があるとされ、中途失明の原因の一位となっております。

大きく分けますと、2種類の緑内障があります。一つ目は、房水(眼球の内部を循環している透明な液体)がうまく流出されないため、眼圧が上昇し、視神経が傷つくことによって起こる緑内障です。二つ目は、眼圧は正常なのに起こる緑内障(正常眼圧緑内障)で、全体の7割を占めております。原因は特定されていませんが、眼底の血流不足や活性酸素の関与が疑われております。

西洋医学では、眼圧を下げる点眼薬での治療が主流になります。正常眼圧緑内障でも、ほとんどの場合、進行を抑えることができます。進行の程度によって、「レーザー治療」や「手術療法」も検討されます。

加齢性黄斑変性症

加齢に伴い、網膜の一部である「黄斑」が傷害される病気です。「物が歪んで見える」「視野の中心部が暗く見える」「視野が欠ける」等の症状が現れ、放置すると失明するおそれがあります。

日本では失明の第4位となっており、中高年の男性を中心に急増しております。脈絡膜にある毛細血管から出てくる新生血管などが原因と考えられています。

西洋医学では、残念ながら治療法はありません。できた新生血管にレーザーを当てて焼き切ることくらいになります。

飛蚊症

目の前で小さな虫が飛んだり、糸くずが舞ったりしている様に見える症状です。加齢によっても起こるもので、通常は問題ありません。ただ、視野の中心にかかる飛蚊症は非常に気になるものです。

飛蚊症が突然に現れたり、見える物が急に増えたりした場合は、網膜剥離を起こしている可能性があります。西洋医学では、手術以外の治療法はありません。

ドライアイ

涙の分泌が減ったり、涙が蒸発しすぎることにより、目が乾いてしまう慢性の病気です。症状は、「目が疲れる」「目の不快感や痛み」「目がショボショボする」などです。

近年、ドライアイに悩む人が女性を中心に急増しています。疲れ目の原因の多くがドライアイで、目を酷使するパソコン作業の増加などにより起こりやすくなります。シェーグレン症候群(原因不明の自己免疫疾患)などによって起こるドライアイは強く症状が現れます。

西洋医学では、ヒアルロン酸など保水効果や傷を早く治す働きのある点眼液で、目の表面を潤すのが基本になります。

カウンセリングと漢方処方

現代人は目を酷使することが多くなり、その上不規則な生活や偏った食事などで内臓に負担をかけ、一層目に悪影響を与えているケースが多いです。

そして、漢方では目は「五臓六腑の精気の集まるところ」と考えます。目の苦情を改善するには内臓、特に胃腸や肝臓の働きをよくすることが大切です。

眼精疲労

その方の体質(証)や症状によって異なりますが、肝の働きをよくして目の疲れを取る処方がよく使われます。

その他、活性酸素を除去する抗酸化サプリメントがよい結果を表すケースもあります。

【処方例】
サイコケイシカンキョウトウ、ショウサイコトウ、サイコケイシトウ

白内障

簡単にできる手術が普及してきたので、ある程度進行してしまった場合は、手術療法を優先します。

いくら手術が簡単になったとはいえ、目の中にメスを入れると言うことは、精神的な負担になることが予想されます。できることなら、手術を回避、もしくは時期を遅らせることを希望されるのが人情だと思います。初期の加齢性の白内障の場合、漢方でその老化現象の進行を抑えることを目指します。具体的には「補腎剤」が多く用いられます。
また、白内障の原因が水晶体のタンパク質の酸化であることから、前述の抗酸化サプリメントを用いることも多いです。 あくまで、進行防止の補助的な役割になります。

【処方例】
ゴシャジンキガン、ハチミジオウガン、ホチュウエッキトウ

緑内障

まずは速やかに眼圧を下げる必要があるので、西洋薬の点眼液が優先になります。漢方薬は根本的な解決を目指し、併用して頂くことが多いです。

具体的には、体内に滞った水分を正常に循環させる「利水(りすい)剤」や、血液の滞りを改善する「駆お血剤」、精神的な緊張やストレスを改善する「利気(りき)剤」などの組み合わせの中で選薬します。

特に正常眼圧緑内障のケースでは、眼底血流を改善させるため「駆お血剤」をよく使います。また、活性酸素が関与していることから、抗酸化サプリメントの併用も欠かせません。

加齢黄斑変性症

前述の通り、西洋医学では有効な治療方法がありません。漢方では、上述の体全体のバランスを整える漢方薬とともに、血管新生を抑制する効果を期待できるものを取り入れます。健康食品になりますが、サメ抽出脂質が有効な場合もあります。

飛蚊症

こちらも西洋薬に有効な治療法がありません。白内障と同じ処方「補腎剤」がよく使用されます。また、かなり個人差はありますが、抗酸化サプリメントが著効を示すケースもあります。どうしても気になるという方は、トライしてみる価値があると思います。

【処方例】
ゴシャジンキガン、ハチミジオウガン、ホチュウエッキトウ

ドライアイ

「目は五臓六腑の精気が集まるところ」という考え方から、飛蚊症と同様、「補腎剤」を用いるケースが多くなります。目の表面にある角膜は常に紫外線の影響を受け、活性酸素が発生しやすい状況にあります。このことから、抗酸化サプリメントをまず選択してみるのも有効です。さらに、角膜は大きな枠で捉えますと、「粘膜」の一部になります。腸の環境を整え、腸管免疫を強化することにより、身体全身の粘膜を強化する「免疫ミルク」も非常に有効であると考えます。

【処方例】
ゴシャジンキガン、ハチミジオウガン、ホチュウエッキトウ

体質改善・快方のプロセス

他の疾患にも言えることですが、まずは「気」「血」「水」という身体のバランスを整えることが基本になります。

眼精疲労は症状が軽度の場合、漢方薬またはサプリメントの服用後、2~3日で症状が改善されることも多いです。その後、予防の意味で、保健薬的に服用されることをお勧めいたします。

白内障、緑内障、加齢性黄斑変性症は残念ながら「完治」が難しい疾患になります(白内障手術を除く)。まずは、今の状態を維持し、進行を遅らせることを目指します。ですから、いつまで服み続けるというよりも、長期的に継続服用することがとても大切になります。経済的なご負担を強いることになりますが、症状が少しでも緩和してきたら、漢方薬等の量を減らすことも可能です。

飛蚊症は抗酸化サプリメントを摂ることによって、わずか2~3ヶ月で完治された方もいらっしゃいます。ただ、個人差が非常に大きく、長期で飲まれても改善しない方もいらっしゃいます。

ドライアイは抗酸化サプリメントおよび免疫ミルクの併用で、早期に効果を現す方が多いです。保水用の点眼液が不要になられる方もいらっしゃいます。ぜひ、トライしてみてください。

養生法

養生法はその方の症状により異なりますが、まず申し上げたいこととしましては、『胃の働き』を整えることです。「目は五臓六腑の精気が集まるところ」。内臓の働きのバランスが崩れることにより、目の病が引き起こされる場合も多いものです。次に『肝の働き』をよくすることも心がけるようにしてください。東洋医学で重要な概念に「五臓論」というものがあります。五臓論によると、目は肝の働きを密接に繋がっていると考えられています。

もちろん、目の酷使は避けなくてはいけません。目が疲れたなと感じたら、早めに目を休ませることです。目の疲れを取るマッサージなども有効です。しっかりと休養をとり、神経を疲れさせないようにすることが、内臓の働きをよくし、目の病の改善に繋がります。