痔の主原因は『鬱血』です!二本足で立って生活している人間には、肛門部が心臓よりも低い位置にあります。そのために、肛門部に張り巡らされている静脈に圧力がかかりやすく、鬱血が生じてきやすいのです。

さらに便秘や妊娠、食生活など様々な要因が関連していろいろな種類の痔が生じてきます。

痔は肝臓に炎症が起こりやすくなることや、肝臓の代謝機能が低くなることも原因になります。

痔核(じかく)=いぼ痔

肛門静脈の血行が悪くなり、血液がうっ滞(血栓)してはれものができるものです。できる場所によって、内痔核、中間痔核、外痔核に分けられます。出血が少なく、痛みが激しいのが特徴です。最も多い痔であり、漢方が多用されます。

脱肛(だっこう)=ぬけ痔

肛門の粘膜が脱出したり、直腸の粘膜が脱出して、痔核が肛門内に戻らない状態です。衰弱した老人に多く、痛みが激しいです。また、神経質な方に多い痔でもあります。

裂肛(れっこう)=切れ痔

便秘などで硬い糞便にこすられたりすることによって、肛門の粘膜に傷が入ったものです。主な症状は排便時および排便後の激しい痛みです。出血をともない、細菌感染による患部の悪化や肛門潰瘍につながります。

痔瘻(じろう)

肛門周囲膿瘍が肛門の外側に腫れあがり、自然に破れることにより、膿が排出した細長いトンネルができます。
膿が溜まっていれば、痔瘻の出口から少量の膿が出続けます。かゆみを生じることもあり、とにかく不快感があり、難治の痔になります。

カウンセリングと漢方処方

痔の状態は肝臓と密接に関わっているケースが多いです。また、痔の影響で、便意を我慢し便秘になっていますと、肝臓に影響が出てしまうことになります。

このような悪循環を断ち切るためには、急性、慢性を問わず「乙痔湯(おつじとう)」という漢方処方が効果的です。ただ、虚弱体質の方には合わないので、よく相談してから服用することが大切です。

少し話がそれますが、戦国時代の武士は馬に乗ることが多く、その結果、肛門部の鬱血により痔で悩んでいる人が多かったようです。そのときに考え出されたのが初代・乙痔湯(現在のものとは処方内容が違います)で、激しい戦いをしていた武士に合うような体力のある方に処方する漢方でした。

時は流れ日本人の体質も変化する中で、明治時代の漢方医、浅田宗伯が初代の乙痔湯を改良し、時代に合った(体力のない人向き)乙痔湯と変化しました。それからさらに時代が流れ、この二代目・乙痔湯も虚弱体質の現代人には強すぎる処方になってしまいました。その場合は、体力をつけたり血行をよくする漢方薬を先に服んで頂くこともあります。

【処方例】
オツジトウ、ホチュウエッキトウ、トウキシャクヤクサン、キュウキキョウイガイトウ、ダイサイコトウ、オウレンゲドクトウ、トウカクジュキトウ

体質改善・快方のプロセス

痔の中で最も多い痔核の場合、漢方を服用してから比較的早期(3日ほど)に効き目が出る場合が多いです。出血や痛みが緩和されます。症状が安定してきても、漢方の服用を止めると、再発する可能性が非常に高くなります。肝臓を正し、門脈や肛門周辺部の静脈の鬱血を予防する意味でも、血液浄化および血行促進できる漢方薬を、予防用に服み続けられることを強くお勧めします。

その他、痔瘻などは治りにくく当分は漢方薬を服み続けて頂く必要があります。途中で処方が変わることも少なくありません。(体質が変わる)

どうぞ、辛抱強くお続けください。

養生法

  • 便通を整える
    便秘になるとついついトイレに長居をしたり、力を入れて無理矢理便を押し出そうとしがちです。これが肛門の粘膜を傷つけてしまい痔を悪化させる要因となります。毎日、規則正しく、気持ちの良い排便の習慣を心がけるようにしましょう。

  • 適度な運動を
    サイクリングのように同じ姿勢でいるものは、鬱血を助長することから避けた方がよいですが、ランニングや体操などの軽い運動は血液の循環を良くします。

  • 怒らないよう、穏やかな毎日を
    漢方では『怒る』という感情は肝臓と関係があるとされています。すなわち、肝臓が悪いと怒り症になったり、怒ってばかりいると肝臓が悪くなるという悪循環を繰り返してしまいます。肝臓が悪くなり、炎症を起こすと肛門部の鬱血を悪化させてしまうため、怒ることが痔の改善の妨げになるのです。

  • 入浴で患部を清潔に
    お風呂に入ることで、肛門部の血行が良くなり鬱血を取り除きます。また、細菌の感染により炎症や化膿がひどくなります。患部を常に清潔に保つ必要があります。

  • 刺激のある食べ物は避ける
    香辛料など刺激の強いものは控えめにしましょう。また、アルコールは肝臓に負担をかけるために、肛門部の鬱血につながります。こちらも控えるようにしましょう。