高コレステロール血症

高コレステロール血症とは脂質異常症ともよばれ、血液中のLDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪のバランスが乱れた状態のことを指します。そして、高コレステロール血症があると、動脈硬化が起こりやすくなります。 LDLコレステロールが血液中に増えすぎると、LDLが酸化され動脈の内皮にアテローム(粥状)プラークがたまり、その結果、動脈硬化を引き起こします。血液の通り道が狭くなり、血管壁が硬く脆くなります。

動脈硬化が進行して血液の通り道が狭くなると、必要な酸素や栄養素を送る血液の流れが悪くなります。ひどいときには、血管が完全に詰まって、血流が途絶えてしまうこともあります。

それが心臓の血管で起これば『狭心症』や『心筋梗塞』を、脳の血管で起これば『脳梗塞』を招くことになります。

高コレステロール血症の原因はさまざまですが、特に多いのは食生活の偏りや運動不足です。中性脂肪やコレステロールを増やす糖質やアルコールを摂りすぎることも大きな原因となります。

これらのほかにも、糖尿病、甲状腺や腎臓の病気、そして遺伝的要因が原因になる場合もあります。

忘れてならないのが女性ホルモンとコレステロールの関係です。閉経により女性ホルモン(エストロゲン)が少なくなると、LDLコレステロール値が生理的に上がるという現象が認められています。

西洋医学ではLDLコレステロール値を下げる薬として『スタチン系薬剤』が頻繁に処方されます。ただし、薬物療法はLDLコレステロールの数値を改善する効果はありますが、動脈硬化を進める原因そのものを取り除くことはできません(対処療法)。 また、横紋筋融解作用(筋肉を溶かす)を始め、看過できない副作用を起こすことがあります。

<高コレステロール血症の診断基準>

  • LDLコレステロール値 → 空腹時採血で 140mg/dl 以上
  • HDLコレステロール値 → 空腹時採血で 40mg/dl 未満
  • 中性脂肪(トリグリセライド)値 → 空腹時採血で 150mg/dl 以上

カウンセリングと漢方処方

漢方薬の場合、すぐにLDLコレステロールを下げるというものはありません。血液を浄化するものや高コレステロール血症の原因を除く処方、つまり代謝を上げて肥満をなくすものなどを使います。

いずれにしても体全身を変える必要があります。運動療法や食生活の改善等と併せて、長期間かけて辛抱強く良くしていく必要があります。

【処方例】
サイコケイシカンキョウトウ、ハチミジオウガン、トウキシャクヤクサン、オウレンゲドクトウ、サイコカリュウコツボレイトウ、ダイサイコトウ 等

スタチン系薬剤のような副作用がなく、速やかな効果を期待される場合、米紅麹の摂取が有効です。スタチン系薬剤に換わるものとして昨今、注目を浴びております。

その他、特定保健用食品であるイサゴールゼリージュース(サイリウム含有)も効果は緩やかですが高コレステロール血症を改善することが期待できます。

また、エイコサペンタ塩酸(EPA)は中性脂肪を下げる働きがあることが分かっております。サプリメントとして摂取することも有効だと思います。

体質改善・快方のプロセス

前述しましたように漢方薬のケースでは、体全体のバランスを整えることにより高コレステロール体質の改善を目指します。長期服用が必要で、さらに適度な運動や食養生の併用も必須事項となります。

場合によっては、西洋薬の併用も考える必要があります。漢方が効き出すにはかなりの時間を要するので、それまでは西洋薬で値を下げておくという考え方です。米紅麹はスタチン系薬剤と同様の効果が期待できますので、結果を速く求められる方には最適です。

特定保健用食品やEPAなどは、あくまで予防的に考えて頂ければいいと思います。過度の期待は出来ません。

養生法

もっとも大切なことは、食事と生活習慣の改善です。食事では、栄養バランスのとれた、適切なエネルギー量の食事をとることが大切です。また、コレステロールを多く含む食品を摂りすぎないように、1日の摂取量を300mg以下に控えます。例えば、鶏卵1個に含まれているコレステロールは約200mgです。

運動も必須です。ウォーキングなどの適度な運動によって中性脂肪が効率よく減らせ、HDLコレステロール値を上げる効果も期待できます。

忘れてはならないことが禁煙です。喫煙は、動脈硬化を促進させる重大な危険因子です。

閉経を迎えられた女性のケースでは、イソフラボンが含まれる大豆食品を多く摂ることを心がけましょう。