現代人は食欲を感じる前に惰性で食事を摂るケースが多いものです。食欲がなければ、一食抜いてみてそれでも空腹感がなければ病気を疑いましょう。
食欲不振は大きく分けて二つのタイプに分類されます。一つは食べ過ぎや飲み過ぎ、または風邪などによって、起きるものです。こちらは原因がはっきりしていて、一時的なものなのでそれほど深刻なものではありません。食養生中心に、胃の負担を軽くする漢方薬を服用することで回復します。
二つ目は、胃・腸・肝臓・膵臓・胆道の病気や神経性食欲不振症(拒食症、思春期やせ症)などによる食欲不振です。このケースは注意が必要です。食べ過ぎ、飲み過ぎがないのに、いつも食欲がない場合、何らかの疾患により起きている可能性が考えられます。
次に食欲不振を起こす疾患について具体的に解説いたします。
消化器系 | 胃癌・胃十二指腸潰瘍・潰瘍性大腸炎・肝硬変・急性胃炎・急性肝炎・下痢・膵癌・大腸癌・胆嚢炎・胆嚢癌・便秘・慢性胃炎・慢性膵炎 |
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循環器系 | 亜急性心内膜炎・うっ血性心不全 |
内分泌系 | アジソン病・甲状腺機能低下症・シモンズ病(下垂体性悪液質)・糖尿病(重症)・肥満症 |
呼吸器系 | 気管支喘息(重症)・肺結核・肺気腫 |
血液・免疫系 | 悪性リンパ腫・エイズ・白血病 |
泌尿器系 | 腎不全 |
精神神経系 | うつ病・神経症・神経性食思不振症・自律神経失調症・髄膜炎・脳腫瘍・統合失調症 |
その他 | 亜鉛欠乏症・アルコール依存症・感染症・つわり・薬剤の副作用 |
などの疾患の可能性があります。
カウンセリングと漢方処方
病気が原因ではな頂の食べ過ぎ、飲み過ぎによる「胃もたれ」の場合は、漢方薬がよく効くケースが多いです。胃弱タイプ、消化不良タイプ、胃酸過多・胃痛タイプ、などその人の症状により、処方を選びます。一時的な服用でも大丈夫です。
次に検査をしても原因となる病気がはっきりしない場合、西洋医学では消化管の運動機能を改善する薬などを使用しますが、十分な効果が得られることが少ないものです。漢方では、消化器系の機能全般が弱くなった状態を、消化器系だけではなく免疫系の機能も低下した「脾虚(ひきょ)」の状態と捉えてそれに合った処方を選びます。
最もよく使う漢方薬は、「リックンシトウ」です。この漢方薬は、消化機能や体全体の活力低下、消化器系の代謝障害を改善する働きがあります。逆に、多くはないですが、体力が充実している「実証」のタイプの人には、心臓下部の熱を冷ます働きのある黄連,黄ごんを含んだ「ハンゲシャシントウ」をよく使います。
なにが別の病気にともなう胃もたれの場合は、その原因となる疾患に対応することが先決になります。逆に「慢性的な食欲不振」が大きな疾患のシグナルであることも少なくありません。あまり続くようでしたら、躊躇なく病院を受診してください。
体質改善・快方のプロセス
食べ過ぎ・飲み過ぎなどによる食欲不振の場合、漢方薬が合えば、速やかに症状が改善されます。もちろん食養生が必要なことは言うまでもありません。よくなってからも、予防および体質改善のために漢方薬を継続服用されることをお勧めいたします。
胃そのものの機能が落ちて起きる食欲不振の場合は、前述しましたが、体質を改善するために長期間の服用が前提になります。ただし、二か月も服用して頂ければ、食欲が出てきます。ただし、何度も申し上げますが、そこで漢方薬をやめてしまうと元に戻ってしまいますので、辛抱強く継続服用して頂きます。ただし「病気が元で起こる食欲不振」の場合は、原因疾患により対処方が異なります。
養生法
「食欲不振」の場合は、「生活習慣を改善」することに尽きます。
- 体や胃腸に良い食生活を
食欲不振をよく起こす方は、食生活の面でなにか問題のあることが多いです。- 1日3回、規則正しくバランスの良い食事をする
- 水分のとりすぎに注意し、胃腸に負担をかけない
- 腹八分目を心がける
- インスタント食品を摂りすぎない
- ストレスのない生活を
胃腸の具合は気持ちに左右されます。ウォーキングなどの軽い運動やアロマテラピーなどで気分転換しましょう。 - 規則正しい生活で胃腸を大切に
睡眠不足や過労を避けて、十分に休養を摂るようにしてください。また、精神的な緊張を避けて、心身の安静を保ちましょう。